数多くのブランドが生まれては消えていく今日、ブランドの肩書に「ファクトリーブランド」という表記をよく目にするようになったと思いませんか?
ファクトリーブランドとは、OEMやODM専門でやり繰りしていたメーカーが立ち上げたブランドのことです・・・という説明をすると、OEMとODMって何?という連鎖疑問が発生すると思いますので、その辺も含めて、この記事では解説していこうと思います。
『工場のブランドって、どこのブランドも工場が作ってるんじゃないの?』
『プライベートブランドっていうのも聞いたことあるけど、違いは?』
『OEMって何?ODMって何?』
そんな疑問をお持ちの方のお手伝いができれば幸いです。
前提として知っておいてほしい「OEM」と「ODM」
まずザックリとした理解として「OEM」も「ODM」も、自社ではない会社に生産を委託するビジネスの形です。
例えば、有名なファッションインフルエンサーが、こんな服をデザインしたけど(設計したけど)自分では作れないので知り合いの町工場に生産をお願いしたというケースがあったとしたら、これはOEMなのです。
生産だけ委託したらOEM。設計から生産まで全部委託したらODM
では、ODMは何かというと、有名なインフルエンサーが、オリジナルシャツを作りたいけどデザインの知識がないので、シャツのデザインから生産まで全部知り合いのメーカーにお願いしたというケースがあったとしたら、それはODMになります。
ファクトリーブランドとは、作る専門だった工場が立ち上げたブランドのこと
直訳すると「工場のブランド」という意味になるファクトリーブランド。
ざっくりした理解としては、他のブランド・企業から生産依頼を受けていた工場・メーカーが、自分たちで立ち上げたブランドのことです。
ファッション系のブランドでは特にそうなのですが、「商品を企画・デザインした会社」と「その企画・デザインされた商品を作る会社」は別々であることがほとんどです。
理由は単純。
今も昔も、物を作るためには“それなりの設備や環境”が必要になるからです。
新しい商品をデザインしたとき(新商品のアイディアが閃いたとき)その商品のためにイチから工場を建てるのは、どう考えてもムチャな話です。
既に設備が整っている工場に生産を依頼する方が現実的ですよね?
これは新商品に限った話ではなく、人気の定番商品も同じように他の工場に量産を依頼していることが多いのです。餅は餅屋ということです。
そして、今回取り上げているファクトリーブランドとは、そんな風にこれまで依頼された生産のみをこなしてきた工場・メーカーが、自分たちで立ち上げたブランドということ。
工場のブランドというのは、そういう意味なのです。
ファクトリーブランドと「プライベートブランド」とは違う?
ファクトリーブランドに似た雰囲気の用語として、「プライベートブランド」なるものがあります。
これは、様々な他社ブランドを取り扱っていたセレクトショップが、自分のブランドとして立ち上げたブランドのことという理解でおおよそ大丈夫。
他社ブランドの商品を作る専門だった工場が立ち上げるファクトリーブランド。
他社ブランドの商品を紹介する専門だったショップが立ち上げるプライベートブランド。
そんな違いがあります。
逆に、「オリジナルブランド」という表現ならば、「工場のオリジナルブランド」や「ショップのオリジナルブランド」という風にまとめることもできますね。
最近、ファクトリーブランドが増えてきた理由は?
今日、ファクトリーブランドが増えてきた理由は以下の2つが主な理由なのではないかなと思っています。
- SNSの円熟により、誰でも情報発信できるようになった
- 自立を目指す工場・メーカーが増えてきた
1つ目の理由について改めて説明する必要もないと思うので、今回は2つ目の理由に絞っていこうと思います。
自立を目指す工場・メーカーが増えてきたため
上の方で紹介したように、ものづくりにおいて「生産を企画・依頼する企業」と「生産を依頼される企業(工場)」に分かれていることは非常に合理的である一方で、「生産を企画・依頼する企業」の方が立場が強くなりがちという構造的問題があります。
何故なら、生産を依頼する側は、断られたら他のメーカーに依頼すればいいという選択肢があるのに対して、生産を依頼される企業は、依頼されないとそもそも仕事がありません。
これだけでも、依頼される側は依頼を断りにくい状態にあることが分かります。
新型コロナ騒乱が始まった2020年には、生産を依頼した企業(有名セレクトショップ)が「コロナが原因で客足が遠のいたから、発注を全部キャンセルするね!」と一方的に発注をキャンセルしたことが明るみになり、それはもう、大変な話題になりました。
そんな感じで、「依頼を受けているだけではダメなんだな」と考えた工場・メーカーがより安定した経営のために、もしくは、多くの生産依頼をこなす中で「自分たちのブランドを持ってみたい」という夢を抱き、ファクトリーブランドの設立に打って出たというケースが多いようです。
ファクトリーブランドの特徴・メリットは?
中間コストがないからこそのコスパの良さ(≒価格が安いとも少し違う)
さて、消費者的なファクトリーブランドの良さは何かというと、それはコストパフォーマンスの良さ。
ファクトリーブランドの商品価格には、中間業者や生産依頼の手数料などが乗ってこないため、比較的リーズナブルな価格が設定されていることが多いです。
ただ一点勘違いしてはいけないのが、コストパフォーマンスがいい=値段が安いとは限らないということ。
勿論、純粋にリーズナブルな商品展開をしているファクトリーブランドもありますが、中には
- 「薄利多売では採算が取れない」
- 「作り手のモチベーションが上がる戦略をとりたい(夢のある戦略をとりたい)」
などなどの理由から、しっかりとした価値を乗せた高価格帯の商品を販売しているブランドも少なくないのです。
作った人たちと近いからこそ、より商品に愛着が湧きやすい
一般的なブランドは、生産背景など「ブランドの裏側」を表に出さないのが基本スタイル。
大手メゾンや一流ブランドの商品に「凄いカッコイイ」や「めちゃくちゃセンスいい!」といった感情は抱いても、「こんな人たちが作ってるんだなぁ」と思うことって、ほとんどないですよね?
逆にファクトリーブランドは、作り手が直接発信していることもあって、生産者の顔が見えやすかったり、親しみを感じやすかったりする特徴があります。
おすすめのファクトリーブランド4選
ここからは、おすすめの日本発ファクトリーブランドを紹介していきます。
素材 × 実用服のエッセンスから生み出されるカットソーアイテム
素材の特徴をベースに、
- ワーク
- スポーツ
- ミリタリー
といった「実用性・機能性を求めた衣服」をエッセンスを採り入れたデザインが特徴です。
ブランド創設時から改良を続けているモデルで、ファスナーを閉じきった時だけでなく、ファスナーを下ろした状態での見え方など非常にこだわって仕立てられています。
ジーンズの聖地から始まったブランド「オーディナリーフィッツ」
「10年後も着ていたい服」というコンセプトを掲げながら、デニムジャケットやジーンズといったアイテムをメインに展開しています。
ハイクオリティな、日本製アメカジアイテムを探している方へ
日本で初めて「足掛け式野球用ストッキング」を作り上げた功績や、70年続いてきた歴史をもつタナベメリヤスの工場を母体に立ち上げられ、独自の視点や工夫から、クオリティの高いアメカジアイテムを追及しています。
ジャックマンのTシャツと出会ったことで感動を覚えた方のブログを見つけましたので、よろしければご覧くださいませ。
『アド街ック天国』やNHKに登場して話題。最高の着心地を追及する日本製シャツブランド
「ストレッチ性に優れるニット生地」と「動体裁断®」を組み合わせた、“何も着ていないような気がする”ぐらいノンストレスなビジネスシャツを仕立てています。
あとがき
今回の記事では「ファクトリーブランド」に焦点をあてて、あれこれ紹介・解説してきました。
参考になる部分があれば幸いです。
やれデジタルだ。
やれITだ。
やれAIだと言われる中であっても「実物を生産する力(設備、環境、技術 etc.)」というのは、今も昔も、実は大変貴重なものです。
ファクトリーブランドの中には「雇用を守る」といった目的以外にも、「日本にこの技術を遺すため」というミッションを掲げているブランドもあると言われています。
ぜひ、多くの作り手の人たちが報われるような世界になればいいなと、えらく遠大なまとめ方になってしまいましたが、ここらへんで筆を置きたいと思います。
『紳士のシャツ』編集部の玄木がお送りしました。
ではまた。
究極の着心地を追及する日本のシャツブランド「インダスタイル トウキョウ」特集
“宇宙飛行士の船内作業着”を仕立てた技術と型紙をベースに始まった「インダスタイル・トウキョウ(INDUSTYLE TOKYO)」は、1956年創業の老舗メーカー『丸和繊維工業』が展開する日本のシャツブランドです。
オリンピック選手の競技ウェアや、宇宙船飛行士の船内作業着など、プロフェッショナルのパフォーマンスを支える服に採用された「動体裁断®」という技術を世界で初めて、ワイシャツに投入。『試しに一度着て見たら、他のブランドのシャツが着られない』といった声が寄せられるような着心地を生み出しています。
『アド街ック天国』やNHKなどの映像メディアから、ゴルフ雑誌EVEN、ディスカバリージャパンなどなど、様々なメディアで取り上げられています。